1987 年・1988 年の抜本的税制改革
昭和 62(1987)年・63(1988)年の抜本的税制改革
「水平的公平」の重要性が認識され、社会共通の費用を賄うための負担はできるだけ国民が広く公平に分かち合うことが望ましいとの考えの下に行われた、シャウプ勧告以来の抜本的な改革 1987 (昭和 62 年) 9 月と 1988 年 (昭和 63 年) 12 月に行われた
背景
高度経済成長期を経て、所得水準の上昇・平準化が進む中で、個人所得課税について、累進度が強いことによる負担の累増感や、課税所得の捕捉の程度に差があること等による不公平感が高まっていた
また、消費課税についても、物品税を中心とする個別間接税のみに依存していた中、品目ごとの税負担のアンバランスが指摘されるようになっていた。
目的
「公平・中立・簡素」 を基本理念としつつ、経済社会に適合し、高齢化社会や国際化など将来を展望した税制の確立などを目的として、所得・消費・資産などの間でバランスのとれた税体系を構築すること さらには、株式等譲渡益の原則課税化を通じて不公平税制の是正に努めた 加えて、法人税は税率が42%から 40%、37.5%へと引き下げられ、相続税は最高税率の引下げ(75%から 70%へ)と課税最低限の引上げ等が実施された。 他方、消費課税については、消費の多様化・サービス化にあわせて、社会共通の費用をその構成員全体で負担するという考え方を背景に、限られた物品・サービスにのみ負担を求めるそれまでの間接税制度を抜本的に改め、広く消費一般を課税対象とする売上税の創設が検討され、昭和 62(1987)年に法案が国会に提出されたが廃案 その後、売上税を巡って行われた指摘・議論を踏まえ、物品税などの旧来の個別間接税を廃止し、酒税やたばこ税を大きく見直しつつ、消費一般に広く薄く負担を求める「消費税(3%)」が創設されるに至る 消費税は、世界各国で既に実施されている付加価値税の系譜に属するもの その創設は国際化にも対応した税制改正であったと言える
消費税の仕入税額控除の方式は、当時の取引慣行を踏まえ、総体としての売上高と仕入高を把握して税額を計算する帳簿方式が採用され、付加価値税を導入する OECD 加盟国の全てで実施されているインボイス制度は導入されなかった 参考文献